2024.8.15
女性教育
大田区の社会教育には「青少年教育に重点をおいた」という歴史的背景があることをNo.7号で紹介しましたが、今回は「成人女性を主たる対象として、その資質や能力の向上を図るとともに、男女平等意識の涵養を図り、女性の地位向上を目指すための教育活動」である女性教育についてもその変遷を紹介します。
かつては「婦人教育」という言葉を使っていましたが、大田区では平成4(1992)年に行政用語として使用していた「婦人」を「女性」に改めました。同時に婦人問題対策室を「男女平等推進室」に改め、大田区立婦人会館を「おおた女性センター」に改称し、現在は「男女平等推進センターエセナおおた」として男女共同参画社会の実現を目指した施設として展開しています。
「婦人問題の解決」は、昭和50(1975)年に開催された『国際婦人年世界会議』で採択された世界行動計画が大きなうねりとなり、国や都でも決議や行動計画が策定されていったという時代があります。
大田区では既に昭和24(1949)年に婦人会が結成され、各種講習会や生活改善運動、レクリエーションの機会を作っていました。また、社会教育事業としても昭和32(1957)年から「母親学級」が始まっていました。開始当初は小学校PTAの母親を主な対象としており、うけたまわり学習ではなく参加者の話し合いにより、「人前で話せるようになる」、「人の話を聞くことを覚える」、「物事を考察するようになる」ことを目的とし、学級の記録誌を仕上げるまでの継続的な学習機会として取り組みました。やがて、対象も一般成人女性に広げ、家庭教育の課題や女性の生き方、働き方などを学習テーマにしたり、保育付きの講座や、区民企画会方式など、参加者が主体的に考える学級運営を長年に渡って行い、今もなお社会教育・生涯学習の講座スタイルに息づいています。
現代社会においては、性別や年齢、文化や出自等の違いがあることをあたり前とし、多様な区民の生涯にわたる学習機会を充実する観点から社会教育・生涯学習の推進を行っていますが、婦人(女性)問題の解決という史実は私たちの学びの礎として欠かせない一つとなっています。
大田区社会教育主事
※社会教育コラムでは「社会教育」「生涯学習」を同義語として併記していますが、事業名などによって使い分けることがあります。